兄ちゃん(4)

忘れかけた夢  M6
忘れかけた夢  M6

兄ちゃんと同居していた頃の自分は、不安定なアニメーターと

安定性のある塾講師との2つの仕事を掛け持ちしていました。

学習塾講師の仕事は発散的で自己実現感が強く、

アニメーターとしての作画作業から来る自分自身の欲求不満を満たし、

次第にのめり込んでいきました。

朝から昼まで寝て、昼過ぎから塾講師、

夜から朝までアニメーターといった生活スタイルでした。

身体は酷使されましたが、生活はある程度安定していました。

生活時間帯や、プライベート的にも1Kのアパートに大の男が二人住んでいるという事で

かなり無理がありまして、暫くすると兄ちゃんは同じアパートの斜め下に住むことになりました。

私は生活の安定のため兄ちゃんに塾講師の仕事を紹介したりしました。

しかし、演劇第一の兄ちゃんは稽古とか本番を絶対的に優先しました。

そのために、時間的に決められていて定期的にしっかりと働かなければならないタイプの

塾講師の仕事との相性が悪くて、長続きせずに辞めてしまいました。

兄ちゃんと描く事と演じる事の対比みたいなはなしをした事がありましたが、

「絵は描き貯めることが出来るから良い。」

と言っていたのを覚えています。

子供の頃、父、母、兄ちゃん、お祖父ちゃん、そして自分と、家族5人でした。

お祖父ちゃんが25年ほど前に亡くなり、父が亡くなり15年が過ぎようとします。

静岡の実家では兄と母が暮らしています。

兄は静岡で仕事をしながら、俳優を続けています。

私には客観的な視点はないかも知れませんが、

テレビで観る様々な俳優さんよりも個性的でユニークな存在感を醸し出しています。